データ分析者不足について雑感。

ここ数年、最近は広義の意味でのデータ分析全体が熱く、分析者に対する需要も高くなっているけれども、正直、ここまでの今の状態は一過性なのかな、と。

俯瞰してみるならば、企業でのデータ分析活用のためのバリューチェーンのなかで、現在は属人的で高付加価値となる箇所が多く、また分析者の需要過多であるため、ボトルネックとなってしまっているというのが今の状態。 しかし、企業がアナリティクスを活用できる状態になっている頃には、長期的には分析と活用の標準化によって解消されている、そもそもとして、標準化がなされている状況でなければ、職人芸を超えて業界として活用できる状態にはなっていないのではないかと思う。

例えば、様々なビジネスの中では高付加価値ビジネスに位置づけられるコンサルティングサービスにしても、今や収益の圧力からか標準化された方法論に移行をしようと手探りしている状況を目の当たりにして、コンサルティングビジネスでもそうであるならば、分析業界もこれからの発展の先には同じ流れが待っているな、と感じた次第。

ここでいう属人的という背景には、多様なスキルセットが必要という意味で、現時点で広く言われているデータサイエンティストというポジションの名前の背景には、統計学人工知能機械学習、コンピュータサイエンスの知識とエンジニアリングの経験、EnterpriseITの理解、ビジネスサイドに繋げるためのチェンジマネジメントに必要なスキルとしてのコンサルティング能力などなどを包括して総称しているような感じではあるが、そこに統一的な定義が無い理由は、それは組織側はデータ分析を活用するためのcapabilityをそのまま単一のポジションの単一のロールに直結させてしまっていることが理由で、結果、企業の種類だけ要件はあるというある意味納得がしやすい状況なのだと思う。

これに対して、分析業界からは「分析者のスキルセットを定義しよう」という流れがあるけれども、本来は「企業活動での分析のバリューチェーンとプロセスを定義しよう」も同時にあるべきものであり、そこに対してポジションが決まり、スキルセットが決まって人材マーケットでの要件が決まる、という流れが本来の流れではあるのではないかと思う。
現状のこの取り組みのレベル感は、企業によってかなりの温度差があるのだけれども、全体の底上げというのは、特定の目的に特化したソリューションとそこでの標準化されたオペレーションプロセス、によって実現されるのではなかろうか、と個人的には思っている。

既存のプロセスがないところで、人がいないけれども、最新の技術を手に入れたいとするならば、そういったソリューションを導入することは自然な流れ。 完璧でなくても、お手軽にROIの高いところを狙うならば、レコメンデーションにしたって、ターゲッティングであるとか、コンテンツの出し別けとか、将来的には動的なプライシングとか、そういったソリューションをさくっとブラックボックスとして利用するのがより一般的になり、結果として、それらブラックボックスが入り込んだところから分析のプロセスが定義されていくのではなかろうかな、と。

人材マーケットに目を向けると、そういったソリューションが使われ始めると、極端な話、それらパッケージのパラメータ調整をするだけで、特定の目的はそこそこ達成出来てしまう。 アナリストが不足するという例のレポートがあるけれども、そんな頃にはそれらパラメータ調整をするだけのJobタイトルも「アナリスト」となっており、組織としても分析を活用しており、結果として産業全体でのアナリスト不足という問題は、もしかしたらそこまでの問題にはなっていないのかもしれない。

その時に、今現在でいうところのデータサイエンティスト的な人が必要な場所というのは、企業ごとにカスタマイズしてthe bestを狙うという場所か、若しくはブラックボックスの中身を作る人という位置づけになり、それはアナリスト全体でみるとごく一部という業界図になっているのかも。

個人的には職人芸の余地とそこの価値が残っていてほしいけれども、「マイスター制」を超えたプロセスを確立できなければ、産業としてはスケールしていないということで。
データサイエンティストが不足なのだー、という言葉を聞くと、テイラー先生の「熟練などというものは存在しない」という言葉が頭をリフレインするわけですよ。