分析者としてのプロフェッショナリズムを突き通したら、不遇になったという話。

1行でまとめると、上司の意向に会わない分析結果を出したら、フルボッコされた、というだけの話なのだけれども。

むかし、あるカタカナ系の金融機関の、法人営業本部で分析者をしていた頃のお話。 当時の部署も、そもそもラインも、いわゆるリーマンショックでぶっ飛んでいるので、関係者もいるようでいないので、うん、まぁ。

当時は、銀行や証券会社をお客さんとしたホールセールの統括部門で分析をやっていた関係で、ありとあらゆるオペレーションにまつわる分析をしていたり。
現場側での分析者ならではの面白い経験もできて、新らしい金融商品がローンチしたばかりの時なんかはホールセラーの数が足りないので、午前中はRでプログラムを書いて分析しつつも、そのまま午後は銀行の本部で銀行員を相手に新商品の説明をする、とか。(数字を握っていない営業は楽しいね。)

外国人役員が「データで判断」という方針を明確に打ち出してくれていたおかげで、分析を出来る対象は広く、例えば、営業の行動履歴データや経費データから最適な営業活動パターンの発見、大規模プロモーションのROI計測、地域別の投信残高と競合金融機関からポテンシャルを割り出したり、Expense、Budgetの両面での予算案策定、さらには日本中にいる営業の人員配置案までまで。(たまに、分析の過程で、営業部の不正経理を発見もしてしまったり。オペレーションのExpenseデータはいろいろ見えるのだ。)

一方で営業企画とかの中での位置付けゆえに、日々の仕事で笑顔が無くなるくらいしんどいことが8割くらいなだけれども、一方で何が楽しいって、分析結果が組織に対して直接的な影響があるというインパクトの大きさ。 まれにある、金融機関との交渉のための資料といったようなかなりセンシティブな分析なんかだと、提出物はたったパワポ2枚だけれども、でもそれが外部との交渉において重要な材料となるという、この1枚、数字1つに込められた重圧感の裏返しの楽しさ。 数字は言霊として一人歩きをして、そして意思決定を変化させていく。

そんな一方で、意思決定に直結している故に、「色を付ける」という「圧力」がかかる。 つまり「過去の意思決定を正当化するための材料としての分析」。
大々的なプロモーションのROIがプラスである結果を求められる分析結果とか、分析の本来の価値を考えたら分析ではない。 レポーティングが絶対の外資、特に金融において、上司のマーケティング施策がマイナスなんて出せない。 絶対に出せない。 申し訳なさそうに出してみても、暗にやり直し。
分析者なら誰もがもつ、それに対して抵抗したい気持ちの表現として、そういう類いの分析という名目のレポートでは、あえて表紙に自分の名前を入れなかった。 ちゃんとやった分析結果は、もちろんしっかりと名前を入れてクレジットを明確にするけれど、そんな結果ありきのレポートには名前を入れたくない。というか、内容に責任を取れないから。後は知らん。


でも、一度だけ大きな抵抗をしたことがある。
人員配置の最適化をもとに、新しい配置人数案を作る、というオーダー。 しかし、予定調和を求められた。 「Aエリアに人材を増強したい」という、意向アリキの分析。 一方で「Bエリアの営業部はダメだから、人をはがしたい」というような意向。
でも本当の分析の結果は、、、、 Bエリアは合計のセールス金額は比較的劣るが、実はホールセラーあたりの生産性は非常に高い状態。地方で移動時間がかかるということ、そしてただの思い込みから、Bエリアは過小に評価されているだけなのだ。 意向と逆に、むしろ、Bエリアにこそ人を配置するべきなのだ。 少なくとも、人をはがすべきではない。

全国のエリアの営業同行も多々していたので、Bエリアの営業部隊が本部から評価されないながらもモチベーション高く頑張っているのも知っていて(本部の評価がおかしいという直訴も個人的にはされており)、彼ら彼女らの顔を思い出すと、今回ばかりは、そんなレポート出せないな、と。

今日中と言われるも、本来の結果を出したら、受け取ってもらえない。むしろ、話を聞いているのかと怒られる。。はてはて。
…というわけで苦肉の策として。。。。 まず、逃げ回る。上司の視界から逃げる。 で、当日中だけれども出さない。 ダメ社員。
で、、、 上司が帰った後の深夜に、上司、さらに上のえらい人を相手に、「本日中に結果を送れなくて申し訳ございません、 今までかかってしまいました。 朝に間に合うようにレビュー前ですが、人員最適化の計算結果です。」と、さくっとメール。


…次の日は、もちろん、フルボッコ。
直属の上司から人の話を聞いていないことを怒られ、その上からは「おまえのせいで営業戦略がめちゃめちゃなった」まで言われ、でもその上はレポートには満足しているものの、勤怠管理の厳しい金融機関ということで「なんていう時間まで残っているんだ」と予想外の方向から怒られ、あげくたまたまトイレで横に並んだ外国人役員から「働き過ぎは、ヨクナイですねー」と、カタコト日本語で遠回しに注意される、という。
何で、直属上司から役員以下まで、ありとあらゆる角度で怒られてるんだ、オレ、みたいな。

んでもね、ちゃんと、自分の名前入りでレポートを出すくらいの責任感もあり、誰にも言ってないからBエリアの営業部から感謝をされるわけでもなく、立場的にも直属らへんからの風当たりはきつくなったりも。

今、もしもあの当時になったら、、どうするのかなー?

追記:

  • 直属グループ内だとこういうことがありながらも、それより上の、本部長、役員クラスは、常に客観的なデータを知りたがるわけです。  途中から役員直下レポーティングになったのですが、実際、そうしたらかなりやりやすくなったのでした。
  • 本部長以上に対しても良かれというつもりながらも、勤怠という斜め右上から刺されて、切ない、というのがオチです。
  • ちなみに大モメしたわけでもないので、元部長から元役員まで、今でも飲みに行ったりする関係ですよ。基本、円満なので。